・ドライアイは涙の量が少なくなったり、質が悪くなったりすることで、眼の表面に異常が起こる状態です。 涙が少ないと聞くと、ドライアイの患者さんは眼の乾きを一番に訴えるかと思われがちですが、 意外なことに「眼の疲れ」を訴える患者さんが多いのです。
・ドライアイの診断には特殊な器械もいらないため、どこの眼科でも診断できるはずですが、見逃されていることも多いのが実情です。当院は遠方からの患者さんも多いのですが、治療方針が決まれば地元にお帰りいただき、その後の治療を継続してもらっています。方針が決まるまで数回の通院が必要なこともありますが、できるだけ患者さんの負担にならない、希望に沿った治療を行う努力をしています。
ドライアイの方には以下のような症状があります。日頃このような症状があるかたは、眼科の診察をおすすめします。
*BUT短縮型ドライアイ
BUT=Tear film breakup time=涙液層破壊時間=目を開いてから表面の涙の膜が破壊されるまでの時間。5秒未満が異常とされています。このBUTが短いドライアイは、目の表面に傷もなく、涙の分泌量も正常のことが多く、診察時には見逃されていることが多いのですが、自覚症状が非常に強いのが特徴です。時に精神的なものとまで言われていることがあります。
ドライアイの治療薬、ジクアス、ムコスタの点眼が効きます。通常の外来で診察するドライアイはほとんどがこのタイプです。
*シェーグレン症候群
涙が少なく、眼表面の傷も多いため、点眼治療に反応しないことが多く、涙点プラグの適応になります
。下の写真では黄色く点状に染まる傷がプラグ後には消失し、目の中に溜まる涙も多くなっているのがわかります。
ドライアイの治療の基本は点眼ですが、点眼治療で効果が得られない場合は、涙点プラグ等による専門的な治療を行っています。 涙は上まぶたの耳側にある涙腺で作られ、まばたきにより目の表面に広がります。10%は蒸発し、残り90%は鼻側にある涙点(るいてん)から鼻腔へと流れていきます。涙点は、左右の目に上下、合計四か所にあります。写真は右下涙点とプラグです。
*コラーゲンプラグについて
通常の涙点プラグはシリコン製ですが、コラーゲンでできていて溶けるプラグもあります。プラグの効果があるかどうかをまずは知りたい、シリコン製のプラグの効果はあるが当たって痛みが出てしまう、プラグを何度も入れているうちに入りにくくなってしまった、季節限定あるいはレーシック後の短期間のドライアイと思われるので溶けるプラグで大丈夫、という方にはこちらを入れています。
2-3ヶ月で溶けてしまうのと、費用的にシリコンよりちょっと割高になるときがあるので(コラーゲンプラグは片方の目に入れると4500円ほどが追加になります。)、どちらのプラグにするかは診察時に相談してからになります。
他院の治療でドライアイが治らない、と来院される場合、原因はいろいろです。
*ムコスタ、あるいはジクアス点眼を使っていない。
使ったことがあっても、回数が一日一回(ムコスタは4回、ジクアスは6回です。)しか使っていなかったり、数日使ってやめてしまっている、ということが多いのですが、どちらの点眼も最低二週間使わないと効果が出ないことがほとんどです。
*重症ドライアイだからと0.3%のヒアルロン酸点眼が処方されている。
ヒアルロン酸は0.1%と0.3%の濃度がありますが、通常のドライアイの場合濃い濃度の0.3%を使うと、点眼液のほうに自分の涙が吸われてしまい、かえってドライアイ症状が出てしまいます。
*アレルギー性結膜炎の治療をしていない。
ドライアイとアレルギー性結膜炎の症状は同じです。同時に起きていることもあります。アレルギーがあるときにその治療をしていないと症状はなおりません。
*涙点プラグが必要なドライアイなのに入れていない。
ドライアイの患者さんのうち、涙点をふさいで目の中に涙をためる治療方法である涙点プラグが必要な方はそれほど多くないのですが、重症ドライアイのシェーグレン症候群と思われる眼症状(涙が極端に少なく、眼表面に傷が多い)であるのに、プラグの治療を提案されていない場合もあります。
*あっているコンタクトレンズを使っていない。
コンタクトレンズをしているときだけにドライアイの症状が出る場合は、レンズを変更するだけで改善することがあります。(当院はコンタクトレンズの扱いがありませんので、処方を受けているところでご相談ください。)防腐剤である塩化ベンザルコニウムが入っている点眼薬をコンタクトレンズの上から使用するとドライアイ症状が出ることがあります。
*老眼があるのに対処していない。
45歳をすぎていれば確実に老眼になっています。眼がしょぼしょぼする、見えにくい、という症状をドライアイだと思っている方も多いのですが、老眼鏡をかける、今のメガネ、コンタクトレンズの度数を変えるなどの対処をしないと治りません。
*マイボーム腺炎の治療をしていない。
まぶたのふちにある油の分泌腺であるマイボーム腺に炎症があると、ドライアイやアレルギーのような症状が出ます。これは抗菌剤を使わないと治らないことがあります。
*目薬を使いすぎている。
防腐剤の入っている点眼薬で目の表面に傷ができることがあります。また人工涙液の点眼も頻回に使うとかえって目が乾きます。
*抗がん剤の副作用が出ている。
一部の抗がん剤により眼表面に傷ができることが知られています。眼科受診時には他科の薬使用も説明してください。
*眼瞼けいれん。
目が開きにくくなる病気ですが(まぶたがぴくぴくするのはこの病気ではありません。)、ドライアイの症状を訴える、あるいはドライアイを合併していることがあります。
ドライアイと言われて眼科で目薬をもらっても症状が良くならない場合、診断がまちがっていることがあります。今何に一番困っているのか、ご相談ください。
目薬には保存のために防腐剤が入っていることが多いのですが、この防腐剤のひとつである塩化ベンザルコニウムが原因となり目の表面に傷ができやすい人がいます。
写真は黒目に傷があり他院で目薬の処方が出たものの改善しないために薬が追加となり、最終的には4種類の点眼をしていた方ですが、当院受診後すべての点眼をやめてもらい改善しました。防腐剤による傷は角膜だけに生じ、結膜には傷がないことから診断できます。もし数種類の点眼をしていて症状が改善しない場合、薬の副作用の可能性があります。
*処方せんなしで購入できる人工涙液
眼の表面に傷を作ることがある塩化ベンザルコニウムという防腐剤が入っていないものが市販されています。現在二種類あり、ソフトサンティアとロートソフトワンです。
水道水で洗うと目の表面に傷ができますので、目に薬品などが入ったとき以外は水道水で洗わないほうが良いでしょう。ソフトサンティアとロートソフトワンは、目の表面への影響は少ないのですが、あまりに使いすぎるとせっかく目の表面を守っている涙や粘液を洗い流してしまいます。せいぜい一日10回程度の使用にとどめてください。
市販の目洗いカップも同様であまりに使うとかえって乾き感が出ます。
処方せんでもらう目薬もほとんどが防腐剤が入っています。また薬の種類によっては目の表面に傷ができやすいものもあり、変更が必要なことがあります。薬をもらっても調子が悪くなった場合にはその旨医師にお申し出ください。